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2022年のAIトレンドを3つのテーマでおさらい
~2023年の予測付き~

#AIトレンド

#AI活用

AIの概要や分類・関連技術についてまとめた「0から学ぶAIの基礎」はこちらからダウンロード可能です。

3つの視点で考える

2023年最初の記事として、2022年のAI業界のトレンドを振り返ってみます。
数年前のブームと比べると話題になることは減ったものの、AI技術は常に進化と変化を続けています。実は昨年も大きな変化があったので、この記事を読めば、1年を5分ぐらいで振り返れます。仕事に使えるAIの進化もあるので、こちらも掘り下げてみましょう。
注目点は「どう変わったのか」「何ができるのか」「役に立つのか」という3点です。

話題になったAIトレンド3選

トレンド1:画像生成AIが大進化

任意の文章から画像を生成するAI(Stable Diffusion・Midjorney・DALL・E2・NovelAIなど)が登場しました。
無料で使えるものもあるので、試した方も多いかと思います。これまでも同様のAIはあったものの、生成できる画像の種類や品質は実用性に乏しいものでした。しかし、2022年に登場したAIはパッと見でプロ並のような画像を生成できるようになり、画像生成のみで描かれた漫画(サイバーパンク桃太郎)も登場したほどの人気です。また、歴史上の人物と自撮りする画像を作るなど、アイデア溢れる使い方も出てきました。

画像生成が大幅に進化した背景として、「拡散モデル」という技術が使われています。また、「テキストエンコーダー」と呼ばれる指示された文章の意味を理解する処理も向上しました。これらの元になる技術は従来からありましたが、さらに進化したおかげで実用レベルに近い画像生成を行うようになりました。

今後は動画や音楽などにおいても、生成系AIが大きく進化するかもしれませんね。

AI(Stable Diffusion)によって生成された「馬に乗った宇宙飛行士」

AI(Stable Diffusion)によって生成された「馬に乗った宇宙飛行士」のイメージ

参考記事:画像生成AI「Stable Diffusion 2.0」がリリース--解像度を高め、ポルノ生成を困難に別ウィンドウで表示します | CNET Japan

トレンド2:質問に答える対話型AIが登場

質問をすると、まさに先生のように答えてくれる対話型AI「ChatGPT」が登場しました。
わからないことを調べてくれるだけでなく、指示に合わせてプログラムを出力するなど、人間の仕事を補佐してくれます。近い将来、何かを調べる時は検索ではなくAIに相談するかもしれませんね。しかし、まだ間違いも多いので、今後は正確性を向上させる点が課題になりそうです。

背景となる技術には「GPT-3」という大量のデータを学習して文章を分析・理解する人工知能が元になっています。そこから人間が理解しやすい自然な文章を出力できるように学習方法を強化しています。

ChatGPTを開発したOpenAIには、マイクロソフトが数十億ドル規模での投資を決定しました。さらに、同社の全製品にAI機能を搭載する方針を打ち出すほどです。AIへの投資や進化はまだ続きそうです。

質問に答えるChatGPTと回答例

質問「徳川家康とは誰ですか?」回答「徳川家康は、日本の武将であり、江戸時代の初期に活躍した。彼は徳川幕府を創設し、それが江戸時代を統治することになった。彼はまた、日本の国家建設、政治的な統一、軍事的な優位などを推進した。」

今、ビジネスに使えるAIとして注目されている「予測分析」。
業界ごとに予測分析で解決できる課題、必要なデータについてまとめている資料はこちらからダウンロード可能です。

トレンド3:仕事に役立つAIが登場

ここまで紹介したAIですが、「凄いけど使い道がわからない」と疑問を感じる方もいるでしょう。こうした技術を応用して、仕事で使えるAIが登場しました。

忘年会のお断り文章を考えるAI

コロナ禍と言えども、年末年始には忘年会や新年会を開催した企業もあるかと思います。
一方で参加したくない人も一定数いるはずです。しかし、社内の人間関係を悪化させずに、うまく断るのは難しいでしょう。そんな文章を考えるのが苦手な方へ向けたAIも登場しました。断る文章の雰囲気を「丁寧」「カジュアル」「大胆」から指定して、理由として「沖縄の両親が来るから」と入力すると、約200文字の欠席理由を自動で作成可能です。

私は、両親が沖縄から遊びに来るという特別な家庭の事情で、会社の忘年会に出席できないことをお知らせします。私にとって、両親の訪問はとても意義深く、個人的なものなので、何があっても欠席することはできません。家族と一緒に過ごすことじゃたとても大切なことなので、とても楽しみにしています。社員の皆さんは私の出席を期待してくれていると思いますので、パーティーを欠席するのは残念ですが、私がいなくても十分やっていけると確信しています。

参考記事:「忘年会お断り文章生成AI」登場 約200文字の欠席理由を自動生成別ウィンドウで表示します | ITmedia NEWS

いらすとや"風"のイラストを生成

店頭やテレビ番組でも見かける「いらすとや」のイラストはご存知でしょうか?
「いらすとや」にはたくさんの種類がありますが、それでも必要なイラストが見つからなくて困ったこともあるでしょう。そこで誕生したのが「AIいらすとや」です。文章を指定するとAIによって、「いらすとや"風"」の新たなイラストが生成されます。すでに大量のイラストがありますが、それでもイメージに合ったイラストがない場面もあります。そこでイラストの雰囲気を統一しながら、新たな画像を作ることができれば便利ですね。

「馬に乗った宇宙飛行士」を生成した場合のイメージ

参考記事:いらすとや風のイラストを生成する「AIいらすとや」をリリース別ウィンドウで表示します | PR TIMES

AIの3年は世間の30年!?

しかし、AIがここまで仕事や生活に役立つレベルまで発展したのは、最近のことです。同様の技術は以前からありましたが、性能や品質の面で「役に立つ」とは言い難いものでした。それがこの3年ほどで大きく変わっています。
一方で、かつてのAIブームに乗じてAIを導入したものの、まったく役に立たなかった苦い経験もあるでしょう。

本記事で紹介する事例から「どう変わったのか」「何ができるのか」「役に立つのか」という観点で、大幅に進歩したAIが仕事で役立ちそうです。今回紹介した画像や文章の生成ツールを利用することで、アイデア出しや調査が捗ることが期待されます。
アイデア出しにおいては、キャッチコピーや商品説明などを考える場合に、まずはAIに草案を大量に作らせてから、人間が手間を加えて完成度を上げ、判断することでより価値を上げる方法があります。複数のパターンを作るには時間や手間もかかりますが、AIによって老職を削減できるでしょう。
画像生成でも同様に、大まかなイメージを伝えたり、元になる素材をAIで出力してから選ぶのも良いでしょう。従来はこうしてAIを活用するにはプログラミングやクラウドなどの手間が必要でしたが、簡単な画面などの操作で利用できるようになり、敷居が下がり使いやすくなったことも、近年の特徴です。

進化を遂げた映像の世界

過去と比べて大幅に進化したのはAIだけではありません。2022年に話題となったのは映画です。
特に「THE FIRST SLAM DUNK」は大人気で、興行収入が100億円を突破するほどです。同作は約30年前にテレビアニメが放送されましたが、映画版では映像化されなかった試合が最新技術によって制作されており、原作漫画ファンのみならず多くの方が絶賛しています。特に映像においては圧巻で、かつてのテレビアニメ版はセル画というアナログな手法とアニメの伝統的手法から、3DCGを利用して幅広い視点や奥行きを使った視点で迫力ある映像にしつつ、CGっぽさを感じさせない従来のアニメーション風の表現も盛り込んでおり、一線を画した出来栄えを実現しています。
アニメーションという映像技術において、30年という時間はこれほどまでに大きな変化を遂げたのです。

そして、人間にとっての30年は「昔」ですが、AIにとっては3年でも「大昔」と言えます。
AIにおいては、変化する時間は短くなり、進化の幅も大きくなります。かつての3年ほど前には使い物にならなかった画像や文章の生成も、今や仕事で使えるだけでなく人間にも見分けがつかない精度・品質になりました。AIにおいては、たった3年でこれだけ技術や成果が変わってきます。
もしも、過去にAI導入で失敗したとしても、新しいAIを導入すればうまくいくかもしれません。新たな分野でAIが使える場面もあるため、ビジネス課題の解決の糸口にもなるでしょう。過去のAI導入の失敗から決めつけたりせず、改めて「仕事で使えるAI」をどう役立てるか、活用目的を考えてみるべきです。

まとめ

2023年の予測について、先ほど仕事でのAI活用についてご紹介しましたが、今後はより幅広い製品やサービスに組み込まれるでしょう。
一方で、「あえてわからないようにAIを利用する」「実は人間ではなくAIだった」というステルスAIが増えるかもしれませんので注意が必要です。2022年も災害発生時に拡散された画像がAIの画像生成によるフェイクだったということでニュースになったかと思います。AIは便利ですが、信頼が揺らぐようなAIの使い方は避けたいものです。

そして、3年後の2026年になれば、今とは想像できないAIが誕生するかもしれません。劇的な進化に取り残されないよう、常に新しい情報をチェックしておきたいですね。

この記事の著者

マスクド・アナライズ

ITスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスに関するSNS上の情報発信において注目を集める。同社退職後は独立し、DXの推進、人材育成、イベント登壇、ニュースサイト向けの記事や書籍の執筆などで活動。現場目線による辛辣かつ鋭い語り口で、存在感を発揮している。
著書に「データ分析の大学」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」「これからのデータサイエンスビジネス」がある。

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