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行けばわかるさAI導入・推進の道

#AI導入

導入前に失敗することを考える!?事前準備が成功のカギ

企業でAIを導入する際には、何を行うべきでしょう。
まずは「準備」をきちんと進めることが重要になります。なぜなら、AIを導入する前に、失敗する可能性も考慮する必要があるからです。
ここでの「準備」とは企業がAIを使いこなすために、必要なことを事前に済ませることを指します。さらに掘り下げると、大きく3つに分けて「データ」「ツール」「ルール」の準備が想定されます。

1. データの準備

AIの学習に必要なデータをまとめたデータベース基盤を準備します。
社内外を含む幅広いデータを保管することで全社的にオープンな環境でデータを参照しつつ、個人情報や機密情報の参照には制限をかけながら操作履歴などを記録して、安全性も担保できる仕組みを構築していきます。必要な時に必要なデータを準備して、すぐに利用できる状態が理想的です。

2. ツールの準備

必要に応じてAIを開発できる環境を準備します。
GUIで初心者でも使いやすいツールから、クラウドサービスを利用したり、プログラミングによってAIを開発できる環境など幅広い開発を実現する環境を想定します。また、必要に応じて新しいツールを導入できることも前提とします。

3. ルールの準備

AIを開発する人材や、AIを利用できる社内環境を準備します。
技術力を持つエンジニアが社内に在籍していたり、外注に依頼して開発できる体制を想定しています。さらに、AIを利用するにあたって社内の障壁を取り除く規則を作り、「ウチの部門は~」「私のやり方は~」「前任者がこうだから~」などの理由をつけて前例踏襲にこだわらないよう、関係者同士の認識を統一しておくことが理想です。

3つの準備のイメージ

特に3番目の「ルール」における準備では、企業において整備されていない場合が見られます。
「データ」と「ツール」は予算をかけながら技術的な問題をクリアすれば目処が立つため、近年では新たなサービスなどが提供されて、予算や技術におけるハードルも下がってきました。しかし、いくら良いデータと立派なツールがあっても、自社でそれを活かす人材や組織がなければ、宝の持ち腐れです。さらに、ルールに起因する問題は技術以外の社内における力関係や個別に制定されたルールなどの背景で複雑化しており、AI導入活用が失敗する原因にもなっています。

ルール未整備による世紀の失敗

AI導入と同じくルールが整備されずに失敗した事例は多々存在します。その中で世紀の失敗と揶揄されたのが1976年のアントニオ猪木氏とモハメド・アリ氏による異種格闘技戦です。試合前は世界最強と謳われたボクシングヘビー級王者と、日本を代表するプロレスラーという夢の対決から、「格闘技世界一決定戦」という絶大な期待が寄せられました。しかし、異なる競技のため試合のルールが直前まで決まらず、そのせいで試合はずっと猪木氏が寝そべってキックをして、アリ氏が挑発を繰り返す退屈な試合となりました。15ラウンドを戦った結果、引き分けとなり「世紀の凡戦」と酷評されました。
こうして予想のみならず、期待も裏切った戦犯として、猪木氏は多額の借金を背負うことになるのです。猪木氏は不利なルールの中でも善戦したと称賛されることもなく、一方で、アリ氏は足にキックを食らい続けて重症を負いました。

猪木・アリ戦では、異なる競技であることに加えて、お互いに負けたくない事情からルールが決まらず、お互いの妥協点を見い出せなかった点が問題といえます。
同様に企業がAIを利用する場合、普段AIを使わない仕事向けに、AIを導入して成果を出すための新たなルールを作らなければなりません。しかし、人間とAIという違いに対して、人間側の都合を押しつけてAIが能力を発揮できなければ本末転倒です。一方で、これまで人間が行っていた仕事にAIが割り込むと、反発は避けられません。その前に準備が必要と言えるでしょう。

AIの気持ちになれ!

そこで、AIを使う前の「導入」と、AIを入れて利用する「活用」のそれぞれの段階において、求められるルール作りを検討してみましょう。
ここで大事なのは、AIの気持ちになって、とことんAIになりきることです。AIになったら見えてくる、本当のAIが見えてくるのです。相手の立場になってルールを考えることが重要です。

導入におけるルール

  • AIの特性を理解したうえで、どの業務でどうやって利用するかの方針を把握する。
  • AI導入を実現する前の問題点や、人間が対応すべき準備をまとめるリーダー的な存在がいる。
  • AI導入を促進する担当者やチームは、一定の予算や権限を持って社内で影響力を行使できる。

導入段階では、AIをより詳しく知っていくためのルールづくりが重要です。

このように、「導入」のための制定すべきルールを調べて、AIと人間の間に入っての利害調整が求められます。

活用におけるルール

  • データベースやツールを整備して、社内向けに教育できる体制が整えられている。
  • 社内全体がAIによる業務効率化に対して、一定の理解がある。
  • IT部門やITエンジニア以外でも、簡単なAI開発やデータベースの操作ができる。
  • 社内でAIに関する情報提供や相談窓口、活用支援を行うチームを作るなどの体制がある。

次の活用段階では、複数の関係者がAIに明確な指示を出して仕事をさせる仕組みづくりが重要となります。

このようにAIに対するアレルギーを取り除きつつ、詳しくない人でもAIを使いこなすサポート体制が重要になってきます。

さらに、ルールを制定する中心人物も必要になります。
AIを含めた企業におけるデジタル活用の知見を持ったCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)のような立場を想定しています。これは前述のデータやツールの整備においても、同様です。個別部門などで独自に施策を進めてしまうと異なるルールが乱立してしまい、整合性が取れなくなります。会社全体でデータ・ツール・ルールを整備することで無駄な作業を無くし、ノウハウを共有できるようにしましょう。AI導入活用に成功している企業では、ルール整備において中心となる人材が活躍しているのが特徴です。

ルール整備にあたっては、現場とAIをつなぐことも大切です。
AIで成果を出したい現場において、情報が不足し、作業の流れなどが不明瞭なままで言語化されていないことは多々あります。現状を把握できていないままルールを作っても、現場の反対にあって頓挫してしまいます。また、現場としてもAIを導入活用する必要性を感じなければ、AIに対して反発するのも当然です。
そこで、現場とAIを連携すべく、お互いに歩み寄って相互理解を深める必要があります。一般的な企業ではどうしてもIT部門より現場の意見が強い場合もあるので、前述のCDOのような社内において影響力のある人物が自ら現場に出向くなどしながら、意見や要望を汲み取り、現場の課題を理解したうえでルールを考えていく場合もあります。

ここまでで、高額な費用や手間をかけてデータとツールを整備しても、使う側のルールが問題となって成果を出せない点が伝わったかと思います。
いわば業務とAIは水と油のようにまったくの別物なので、うまく融合させるルール整備は重要です。まずはAI導入活用を推進する立場の皆様が、どうやってルールを整備していくか考えて実行していきましょう。

迷わずいけよ 行けばわかるさ

ここまで説明した準備は、どの企業でも参考にできる基本的な内容となります。
皆様の働く組織や部署、グループによって事情も異なるため、逐次修正が必要な点も想定してください。そのうえでどんな準備が必要なのかは、会社をよく知る皆様が率先して考えることです。なぜなら、AIの導入活用を実現するかもしれないテーマについて一番詳しいのはこれを読んでいる貴方だからです。
しかし、まだまだAIの立場になってルールを考えられるほど、AIに詳しくないかもしれません。まずはプログラミングのような難しい手段にこだわらず、簡単なツールで良いのでAIを理解しましょう。その中で普段の業務からAIと相性が良い部分を探してみてください。業務とAIは異種格闘技戦のように異なる存在かもしれませんが、共通点があり、馴染みやすい部分もあるはずです。

AI導入の道を行けばどうなるでしょう?危ぶむばかりでは、道はありません。踏み出せばその一足が道となります。
迷わず行ってみましょう、行けばわかるのです。まずはAI導入の道を見つけてはいかがでしょう。

AI導入活用の道は果てしなく続くイメージ

この記事の著者

マスクド・アナライズ

ITスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスに関するSNS上の情報発信において注目を集める。同社退職後は独立し、DXの推進、人材育成、イベント登壇、ニュースサイト向けの記事や書籍の執筆などで活動。現場目線による辛辣かつ鋭い語り口で、存在感を発揮している。
著書に「データ分析の大学」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」「これからのデータサイエンスビジネス」がある。

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