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人材育成

スキルアップの大冒険-組織でのAI人材育成編-

#AI人材​

AI人材採用クエスト

AI導入活用にあたって、専用の開発ツールやアプリケーション、複雑な処理を行うハードウェアを導入します。これらは費用を払えば手配できますし、昨今ではインターネットを通じてクラウド上で複雑な処理を実行できます。プラットフォームも整い、便利なサービスを利用するためのハードルは年々下がっています。では、このように道具を揃えれば、AIを使いこなせるでしょうか?あくまでAIを開発して実行する道具が揃っただけにすぎません。
次は道具を使える人材が必要になります。

そこで、AI開発における知見を持つITエンジニアを採用することが当然の流れと言えます。
しかし、日本ではこうした人材は希少で、既に他の企業で働いています。仮に外部から採用しようにも高額な年収や人材斡旋会社への手数料などで費用がかさみ、入社しても短期間で別の会社に転職する可能性もあります。

ITエンジニアは定着しない(意図として昨今でITエンジニアが争奪戦になっており、お金をかけて転職させても、他社がより高い年収を提示すればあっさり転職されてしまう流れを表現しています。また、前提としてお金をかけずには採用できない点も暗示しています)。

そこで、採用以外の方法として、育成が考えられます。

学習機会の提供

企業におけるAI人材の育成について考えてみましょう。都合よく社内にAIに詳しい人材はいないので、まずはAI開発に対する素養がある人材を選出します。
考えられる素養としては、以下が挙げられます。

プログラミングの能力や技能

現在はAI開発において様々な手法が用いられていますが、前提としてはプログラミングが基本となります。
AI開発ではPythonなどの言語が使われており、他のプログラミング言語を含めた経験があればスムーズに習得可能でしょう。

理系大学の出身者

大学時代にプログラミングを経験していたり、数式への抵抗感がないなど、技術書をスムーズに理解できるといった点も期待できます。

本人のやる気や意欲

AI開発を習得するにあたって、必要な技術や知識を自発的に学習することが求められます。
会社の指示で仕方なく覚える消極的な姿勢よりも、本人が自発的に取り組むほうが効果的です。

こうした素養を持つ人材が、AI開発に必要なプログラミング・数学・統計・データの準備などといった領域を学んでいきます。しかし、個人による自学自習では限界もあります。
そこで、企業向け研修プログラムで先生役となる人材を手配したり、同じ目標を持つ人を集めたチームでお互いに情報交換を実施するなど、学びやすい環境を作っていきます。会社内の人事制度を整備して、一時的に勉強に集中できるように業務量を減らしたり、資格取得のために受講費用を負担したり、研修講座を修了し、認定試験にパスしたら報奨金を付与するなどの施策も検討してみてください。
こうした学習と経験を積むことでよりAIを理解できたり、会社内でAIが役立つ場面を見つけたり、自分の担当業務に適したAIを企画・開発するなどの成果が見えてくるでしょう。

このように、個々人の得意分野を見つけて役割分担をしながら、強みを活かしていきます。
経験を積むことでレベルアップしながら、新規のスキルも身につきます。そして、複数のメンバーにおける成長と活躍により、AI導入活用という大きな目標を達成するわけです。
ここで何かが見えてきました。様々な能力を持った仲間達が成長を遂げながら強大な相手に挑み、大きな目標を達成するストーリーには、既視感があります。

そして活躍へ…

ここまで読んできた中で、2022年10月に完結したアニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」を思い出す方も多いでしょう。
ダイの大冒険は国民的RPGのドラゴンクエストをモチーフとした漫画で、本記事の読者には少年ジャンプで連載された漫画版をリアルタイムで読んだ人もいると思います。主人公の勇者が仲間とともにスキルアップしながら魔王を倒すというストーリーは、「育成」のモデルケースと言えるノウハウも詰まっています。

AI開発における業務においても、一人ですべてをこなすことはできません。
プログラミング関連のAIの開発領域だけでなく、プロジェクト管理やデータベースの整備などの役割も重要です。これはダイの大冒険における勇者や仲間達のように、それぞれ役割があるのと同じです。
そこで、AI導入活用における職務をダイの大冒険における職業のように分類すると、下記のようになります。

プロジェクトマネージャー

社内外のAI開発にかかわる業務を取りまとめて、スケジュールや予算などを管理する職務です。社内外を含めた意見調整などを行い、チームのリーダーとして開発にかかわるメンバーを引っ張る役割です。
ダイの大冒険的には、多くの人々を惹き付ける勇者の役割と言えます。

AIエンジニア

プログラミング能力を駆使して、AIを開発するITエンジニアの役割です。
複雑な判断や認識を行うAIを構築する頭脳明晰な役割は、ダイの大冒険において冷静沈着な判断力で活躍する魔法使いにあたります。

データベースエンジニア

AI開発には様々なデータを集めて、必要に応じて加工する業務が重要です。地道な作業が多いので目立たない部分もありますが、現場には必要不可欠な職務でもあります。
ダイの大冒険では、敵と戦う矛と仲間を守る盾となる戦士です。

3職種による相互支援のイメージ

この3つの職種を担う人材育成が必要となり、どの職務が欠けてもダメです。
さらに、社内で教育を進めるモデルケースについて、ダイの大冒険から学んでみましょう。

初期段階:家庭教師による基礎訓練

ダイの大冒険においては、最初に家庭教師の元で人間を襲う魔物と戦う技術や知識における基礎を学びました。まだまだ戦力にはならないので、強大な敵との戦いでは生徒は実を守ることに専念して、家庭教師が戦っていました。

企業における育成の段階としては、IT全般やAIに関する基礎的な学習を積んでいくフェーズです。
基本的なプログラミングを覚えて、試作品レベルのAIを作るのが精一杯というレベルです。この段階では前述の職種(プロジェクトマネージャー・AIエンジニア・データベースエンジニア)のどれを目指すかは決まっていませんが、ある程度は自分に適した方向性を見据えておくと良いでしょう。

中期段階:実践と経験を経て新たな師匠に学ぶ

ダイの大冒険においては、強い敵と戦いながら経験を積んでいく段階です。
この過程では、仲間との協力や新たな技能を身につけていきます。さらに、新たな師匠を見つけて、自分の得意分野を伸ばしていく展開となります。

企業における育成の段階としては、それぞれの職種(プロジェクトマネージャー・AIエンジニア・データベースエンジニア)として独り立ちしながら、実務経験を積み、スキルアップしていきます。それでも自力で解決するのは難しい場面になれば、先人のフォローを受けながら乗り越えていきます。
こうしたサポートも含め経験を積みつつ、技術的な能力だけでなく、組織内でプロジェクトを推進しながら、問題解決のノウハウを身につけていきます。

最終段階:唯一無比の存在へ

ダイの大冒険においては、特定の職業を極め、さらに上の大魔道士などの職業に登り詰めようとする段階です。
ここまで伸びると、師匠を超えて魔王にも一目置かれる存在となっていきます。

企業における育成の段階としては、自分の職種におけるスペシャリストであり、他人を指導可能なレベルに達しています。実務経験のみならず、チームリーダーや部門のマネージャーなどを経験して、より大きなプロジェクトに抜擢されてより大きな活躍が期待される段階です。上長や役員に一目置かれて、社内で一定の影響力を行使できる立場を担っています。

3段階による人材育成の流れのイメージ

導かれし者たち

ここまで、AI人材を育成するモデルケースを紹介してきました。
3段階に分けていますが、段階ごとに求められる教育方針や経験が異なる点も理解いただけると思います。大切なことは、順を追って、少しずつハードルを上げながら、適切にスキルアップを実現できることです。
会社内で未経験の人材に対して、最初から難しい案件を任せては、結果を出せずに失敗して自信を失ってしまいます。そのために段階を踏んで成長できる育成計画を立てながら、サポート支援することが求められます。
社内でAIを学ぶためのグループを作り、外部から講師を呼んで体系的に学び、開発や試行錯誤を経験できるコンペティションに参加する場を作って腕試しをするなどの機会を作っていきましょう。
また、社内での反発なども予想されるので、こうした意見に対する防波堤の役割も必要となります。このような役割は現場の担当者では限界があるので、上長や役員などの役割と言えるでしょう。

また、人材育成には時間がかかります。ダイの大冒険は劇中で3カ月ほどしか経過していませんが、驚異的な速度で成長しています。しかし、現実では素養があっても初心者がビジネスで成果を出すために、年単位の時間が必要になります。こうした中長期的な目線に立って関係者を守ることも重要です。
まずはわかりやすくAI開発を学べるツールなどをとおして、素養や適性のある社員を探してみてはいかがでしょうか。

この記事の著者

マスクド・アナライズ

ITスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスに関するSNS上の情報発信において注目を集める。同社退職後は独立し、DXの推進、人材育成、イベント登壇、ニュースサイト向けの記事や書籍の執筆などで活動。現場目線による辛辣かつ鋭い語り口で、存在感を発揮している。
著書に「データ分析の大学」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」「これからのデータサイエンスビジネス」がある。

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