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AI開発におけるPoC成功の秘訣とは?
○○○○に例えて解説!

#AI導入

#PoC

#失敗例​

AI開発における最初のハードルとは?

一般的なシステム開発では、プロジェクト全体における予算やスケジュール、人員をあらかじめ要件定義してから構築が開始されます。対してAI開発では、プロジェクトの規模感を開始前に把握することが難しく、そもそも実用に耐える精度が出せるのかも不明瞭です。
そこで「PoC(Proof of Concept:概念実証)」を行う必要があります。
「PoC」は、本格的なプロジェクト開始の前に行われる試作品開発にあたる作業です。ここで目標となる精度のモデルが出せるかを検証したり、必要な作業量を見積もったりします。しかし、AI開発プロジェクトにおいては、往々にしてPoCで頓挫するケースが後を絶ちません。

PoCを含めた試作開発における失敗は、AIに限りません。製品開発や創作などにおいて、必ず問題となります。そこで、本記事にて他分野からPoCにおける成功と失敗の背景を探りながら、解決策を見出していきましょう。
参考事例においては、下記の要件が当てはまるものが挙げられます。

  • 試作開発から本格的なプロジェクトまで一連のプロセスを解説している
  • 課題の解決や失敗の要因、問題解決の流れなどについて言及している
  • 成功と失敗の両方の事例を紹介して、美談だけでなく厳しい現実も取り上げる
  • 情報源を容易に閲覧と共有ができる
  • 日本のIT業界で働く人材に馴染みがあり、一定の認知度がある

この条件を満たすのは、たった1つしかありません。
皆様ご存知のあの作品です。

「機動戦士ガンダム」です。

※本記事では、1979年に放送されたTVアニメ「機動戦士ガンダム」(および劇場版三部作)のみを取り上げます。

リアルロボットアニメの金字塔であり、今なお最新作が公開される人気シリーズです。
そして、先程挙げた条件においてもすべて満たしています。

  • 試作開発から本格的なプロジェクトまで一連のプロセスを解説している
    →モビルスーツ(ロボット)の開発において、試作から量産化まで一連の流れを追っている。
  • 課題の解決や失敗の要因、問題解決の流れなどについて言及している
    →上記に加えて、主人公側と敵側における開発指針や組織体制の差異を含めて描写されている。
  • 成功と失敗の両方の事例を紹介して、美談だけでなく厳しい現実も取り上げる
    →戦いにおける勝利と敗北という両面における示唆がある。
  • 情報源を容易に閲覧と共有ができる
    →動画配信サービスやレンタル店などでいつでも見られる。
  • 日本のIT業界で働く人材に馴染みがあり、一定の認知度がある
    →IT業界ではガンダムが好きな(あるいは認知している)人が多い。

しかしながら、ガンダムに詳しくない人もいます。
そこで、本記事では「安室とシャーがたたかう話」という一般人の認識を持つ方に向けて、固有名詞や専門用語などを控えて解説しています(ガンダムが好きな方は劇中の単語に置き換えて読んでください)。

ガンダムにおけるロボット開発からPoCを学ぶ

ガンダムの大まかなストーリーは「主人公が所属する地球軍と、敵対する宇宙軍との争い」となります。この戦いで人型ロボットが開発されていますが、このロボット開発体制が両者で異なる点で、後の勝敗を分けていきます。

地球軍のロボット開発

先にロボットを開発した宇宙軍は、戦いの初期段階で圧倒的な勝利を収めます。この段階では一定の成果を挙げています。しかし、地球軍も対抗してロボットを開発することで、徐々に挽回していきます。宇宙軍のロボットにおいても性能などで課題が残されており、後継機の開発が必要になります。この時点では両者ともにPoC試作を行い、一定の成果と問題点を把握した状況といえるでしょう。
ここから本格的なロボット開発プロジェクトを進める中で、地球軍と宇宙軍の明暗が分かれていきます。

地球軍は、戦場で求められる機能要件や相手の戦力を現場で情報収集しながら分析し、敵のロボットに対抗する要素を絞り込みます。そこで、目的に応じてPoCとして3体のロボットを試作しました。このロボットを現場で運用しながらデータ収集と分析を進めて、次の本格的なロボット開発に向けたノウハウを獲得し、実装していきます。
さらに、試作型ロボットにおける「費用が高すぎる」「取り扱いが難しい」などの改善点を把握して、本開発に向けてモデルを再構築していきました。
そして、本開発では機能を分担して、お互いの欠点をフォローできる2種類のロボットを大量生産できました。こうして性能とコストでバランスの取れたロボット開発に成功し、戦いに勝利しました。
つまり、地球軍はPoCで停滞せずに目的を達成した、成功事例といえます。

地球軍におけるロボット開発の経緯

PoC、検証・改善、本番開発。という経緯

宇宙軍のロボット開発

対して宇宙軍は先行してロボット開発に成功したものの、地球軍と戦うには課題が残っていました。改善に着手しますが、最初に開発されたロボットでは性能に限界があります。
新たなロボットの試作を繰り返すものの、要求性能を満たさなかったり、開発を行う人材や資源が分散したり、上層部によって開発方針が二転三転するなどの問題が起こりました。
さらに、複数のロボットが開発されたものの、戦いで活躍できず状況が悪化します。
結果として、中途半端な試作開発(PoC)を繰り返す形となり「地球軍に対抗できるロボットを大量生産する」というゴールは大幅に遅延しました。こうして本開発においても成果を出せず、ロボット開発の失敗が宇宙軍の敗北につながります。

宇宙軍におけるロボット開発の経緯

PoC、試作完成、再検討、再度試作、方向転換、問題発生、原因調査、見切り発車して本番開発。という経緯

ガンダムと会社におけるPoCの良い例・悪い例

ガンダムにおけるロボット開発で知る成功失敗の要因は、企業におけるAI導入とPoCにおいても当てはまります。

課題設定

まずは、目的や要望を入念に調べて課題設定をしましょう。
そもそもAIが得意で活用できそうな業務や、高い精度を出せる手法などは限られています。そこで、PoCという環境下で、予算やスケジュールに制約がある中でも、一定の成果を出しやすい課題を選ぶべきです。最初は、難易度が低く失敗しても影響の少ない課題から対応してみましょう。

データ準備

次に、データ準備分析のやりやすさを考慮しましょう。
PoCを含むAI開発において、AIの学習に使われるデータは、調査・収集・加工などの手間がかかります。さらに、学習させるデータの品質は精度にも大きく影響します。PoCを始める前に、いかに手間をかけずに高品質なデータを収集するかを把握しておきましょう。

問題・改善点把握

そして、PoCは本開発へ進めるかどうかの試金石です。ここまで説明した課題やデータの準備に加えて、現場で新たに発生する問題や改善点を把握しておく必要があります。
事前に現場の担当者に相談しておき、想定される問題に対しては、対策などを想定しておきましょう。

失敗を防ぐための準備

ここまでは成功率を高めるための試作でしたが、併せて失敗を防ぐための準備も大切です。
まず、課題設定においては、要求が高すぎるとPoCはいつまでも終わりません。あえて低い精度にしたり、無謀な要求を除外するなどの決断も必要です。

開発体制

開発体制においては、開発方針を統一できるようにすることが大切です。
PoCに関わる人は少人数におさえて、意見をまとめやすい体制にするのが良いでしょう。併せて、本開発に進んだ場合はより多くのエンジニアが参加するため、チームを取りまとめるマネージャーや他部門への協力を依頼する交渉役などの役割も必要となります。
エンジニアが開発に集中しながら、ビジネス側は社内調整などを進める各々の役割分担が重要になります。

まとめ

ガンダムは創作ですが劇中の描写は第二次世界大戦を参考にしており、当時の兵器開発とガンダムにおけるロボット開発には同一性も指摘されています。戦いでは、どんなに強力な戦車や戦闘機があっても、作るのに手間がかかり上手く操縦できる人がいなければ役に立ちません。AI開発においても精度が高いものの、費用がかかり動作が遅くては意味がないでしょう。
AIもロボットもPoCを繰り返しながら完成度を高めていきますし、他分野の創作であっても学べる点は多いものです。作品づくりの裏側には様々な試行錯誤があるように、AI構築も簡単に成功するものではありません。
他分野のクリエイターを見習って、我々も試行錯誤を積み重ねていきましょう。

ところで、ガンダムでは高性能のロボットと天才パイロットが登場しますが、同じことを企業でも実現できるでしょうか。高価なデータ分析ツールを導入して、さらに凄腕のエンジニアを採用するのは大変です。
そこで、初心者でも様々な分析手法を簡単に試せるツールやサービスもありますので、手軽にAIに触れてみましょう。

この記事の著者

マスクド・アナライズ

ITスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスに関するSNS上の情報発信において注目を集める。同社退職後は独立し、DXの推進、人材育成、イベント登壇、ニュースサイト向けの記事や書籍の執筆などで活動。現場目線による辛辣かつ鋭い語り口で、存在感を発揮している。
著書に「データ分析の大学」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」「これからのデータサイエンスビジネス」がある。

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