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AI活用を実現するのは現代の「軍師」がキーパーソン!?

#AI活用

AIは企業に定着したのか?

第三次AIブームも落ち着きを見せる中で、今やAIサービスの活用が半ば常識になった印象もあります。では実際に、AIは企業活動において有効活用されているのでしょうか。実はまだまだ普及しているとは言い難い状況です。

高名な機関であるIPA(情報処理推進機構)の資料を元に調べてみると、日本企業においてAI技術を導入した企業は20.5%にすぎません。さらに「関心はあるが予定はない」「今後も取り組む予定はない」と回答した企業は49.5%にのぼり、半数近い企業においてAIを活用する動きは見られません。これはアメリカと比較しても、遅れは否めません。

引用:DX白書2021 第1部 総論別ウィンドウで表示します | 17ページより抜粋「AI技術の活用状況の図」

一方で中国においてもAI技術やサービスは浸透しており、市場規模も右肩上がりが予測されるほどです。

引用:中国AI市場に関する調査を実施(2020年)別ウィンドウで表示します | 「中国AI市場規模推移・予測」

まさに日本、アメリカ、中国という3つの国で群雄割拠を呈しながら、AIサービスの導入に対する志向の違いが現れています。それでも普及が進まないのは、一体何が問題なのでしょうか。

AIに立ちはだかる3つの壁

AI活用における障害として、3つの壁が存在します。

1.「人の壁」

1つ目は「人の壁」です。
日本企業では、長年同じ会社で働くことが一般的です。加えて部署の異動や転勤もあり、その都度前任者から仕事を引き継ぎます。そこで引き継ぎをきっかけに、「AIで仕事のやり方を変えよう」と提案すればどうなるでしょう。本人は良かれと思っても、周囲としてはこれまでどおりに仕事をしたいのです。業務改善に対して反発において「このわからずやめらが!」と憤っても、会社において何かを変えるには上司や現場など周囲の了承が必要不可欠です。かといって、泣いて社員を斬るというリストラもできない以上、反対派との衝突は避けられません。

そこで組織をまとめて、AI導入に関する意見を統一するなどの変革が求められます。

2.「組織の壁」

ここで2つ目の壁となる「組織の壁」が登場します。
AIサービスの活用においては仕事の進め方を見直したり、業務に関するデータを整備するといった部門を越えた作業が必要です。ここでは経営層とIT部門と業務部門という3つの組織をまとめあげる必要があります。
しかしながら組織の壁を越えて連携できる企業は少なく、各組織において所轄があり領域に侵入するのは敬遠されるため、3つの組織を統一するのは難しいでしょう。

引用:DX白書2021 第2部 DX戦略の策定と推進別ウィンドウで表示します | 51ページより抜粋「組織の壁を越えた協力・協業」

各組織の長が「我ら3人入社した日は違えども、退職する時は同じ日同じ時を願う」と、居酒屋で誓うことはありません。そこで各組織における利害関係を調節しながら、お互いに足りない部分を補完しつつ、AI活用というゴールを目指すリーダーシップを発揮する人物が必要になります。

3.「実現の壁」

最後となる3つ目の壁は「実現の壁」です。
AI導入には資金、時間、技術などが必要です。しかし限られた資源で対処せざるを得ず、プロジェクトが頓挫したりする事例も目立ちます。開発のために必要だからといって「10日で10万枚のグラボ(※AI開発に必要なパソコンの部品)を用意してほしい」という要求には対処できません。
また、一般的にAI開発は外部の会社に委託しますが、都合の良い提案は鵜呑みにせず「待て あわてるな」と慎重になるべきです。外注先に丸投げでは成功しませんし、失敗しても契約を盾にして高い費用を払わざるを得ません。
AI活用における成功率は、各種調査によると3~4割程度で、試作の開発で終わることも多いです。AIの罠に陥らずに成功させるのは至難の業です。そして今回紹介した3つの壁という現実を見て、「とてもつらい」と心情を吐露する方もいるでしょう。

「軍師」がAI活用のカギ!?

ここまでに日本、アメリカ、中国という3カ国において、AI活用が遅れている現状を解説しました。そしてAIを阻む壁として人、組織、実現における3つの壁もあります。つまり「3つの国」において「壁」との戦いに強い人がいれば、問題は解決できます。ここで見えてくるのが、3つの国と壁を舞台に戦ったあの人です。興亡と戦乱渦巻く中国の歴史において、現代に転生した"あの人"が活躍する作品に答えがあったのです。それこそが「パリピ孔明」です。

引用:パリピ孔明別ウィンドウで表示します | © 四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会

※本記事においてアニメ「パリピ孔明」における若干のネタバレがあります。

「パリピ孔明」は中国における三国志時代に活躍した諸葛亮(※本作に準拠して以後は「孔明」と表記)が、現代の日本に転移して音楽の素晴らしさに目覚める漫画及びアニメ作品です。ここで孔明は歌手を目指す月見英子のマネージャーとなり、三国志時代の戦乱において「軍師」として活躍した能力を生かしてあらゆる困難を乗り越えていきます。

ではなぜ「パリピ孔明」が、企業におけるAI活用の重要な役割を果たすのでしょうか。まず三国志は、時代を越えて様々な形でメディア化されており、年齢を問わず知名度があります。特に横山光輝氏の漫画、光栄(当時)のテレビゲーム、NHKの人形劇で三国志を知った世代は、企業において重要な役割を占める立ち位置にいる年配世代です。ここで経営陣への報告や上司へのプレゼンにおいて「我が社のAI活用には孔明のような軍師が必要です」とアピールすれば、貴方の注目度は「部下その1」から「若いのに三国志を知っている智謀家」に評価が変わります。「三国志」という共通認識は、社内の影響力の強い世代に対して相互理解を深める手段となります。さらに今年アニメとして放送されて漫画も連載中の「パリピ孔明」は、若い世代にも認知されています。ここでAI活用における意見の相違が発生する前に、前段階として三国志を通じた社内コミュニケーションを取ると良いでしょう。

さらに昨今におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)においても、変革リーダーがもっとも重要な人材とされています。孔明のような組織を新たな方向性に導く役職は、現代における企業変革に取って必要不可欠といえるでしょう。

引用: DX白書2021 第3部 デジタル時代の人材別ウィンドウで表示します | 102ページより抜粋「DX領域で採用・育成すべき人材像」

では「パリピ孔明」において、AI活用の3つの壁はどう関係するのでしょう。
こちらも本作をとおして、軍師たる孔明によって策が冴え渡っています。最初の壁である「人の壁」において、対立関係や意見の衝突が問題であると説明しました。それを孔明であれば、どう対処するでしょう。作中では孔明達を引き立て役にしようとしたり、屋外ライブで他のバンドにより集客に苦戦する問題が起こります。重要なのは、孔明が入念に準備して対策を練った点です。引き立て役としてゲストに呼ばれれば事前にフロアの間取りを調べて、スモークや照明やスタッフの配置を工夫することで「石兵八陣」の計略を再現します。屋外ライブでも相手バンドが抱える問題や経緯を探ったうえで、偽装工作をあえて露見させて相手の油断を誘う「無中生有」の策を講じます。結果として他者の妨害に対処しながら、相手に配慮して無用な争いを避けています。

次に2つ目の壁となる「組織の壁」において、孔明はどのように乗り越えたでしょうか。
マネージャー(軍師)として人気を獲得するため、様々な関係者に打診します。別ジャンルのミュージシャンであるラッパーやストリートミュージシャン、音楽制作におけるエンジニアから大型イベントを仕切るレコード会社の大物社長といった幅広い人脈を形成していきます。さらに大型イベント出演という大きな目標を達成するため、複数の異なるミュージシャン達をまとめながら、それぞれに課題を乗り越えるために努力を促します。このように様々な手段を用いて、異なる立場の人も結束をさせていきます。結果として、様々な分野の新たな仲間を得て大きな成長を遂げて多くのファンからの人気を獲得することで、大型イベントへの出場権を手に入れました。

AI活用を進めたい組織において、孔明の策をどう活かすべきでしょうか。
まずは、経営層とIT部門と業務部門の各組織において「誰が何すべきか?」「どんな人材が足りないか?」などの課題設定と、所属部門にどんなメリットと負担が発生するかという利害関係の調整を行います。その際に各部門から独立した「軍師」たる役職の立場で、各部門の利害調整を進めながら縦割りを越えた協力体制を作ることが重要となります。ここで社内の立場から調整すると、どうしてもしがらみが出てしまいます。そこで外部のコンサルタントや転職者などが専門家として知見と第三者的な視点で、抜本的に部門間の縦割りを無くしていきます。社内の立場から改革する場合は、後ろ盾になる権力者を据えるなどの策も有効です。こうして異なる組織をまとめてあげていきましょう。

最後の壁となる「実現の壁」について、パリピ孔明から学ぶことは何でしょうか。
孔明は自らの足を使って、他者を利用します。音楽制作のエンジニアとの信頼関係を築き、成長のためストリートライブをする前に道路使用許可証も取得します。三国志における史実でも、戦に必要な10万本の矢を調達を命令されました。もちろん正攻法で大量の矢を確保することは出来ません。そこで囮を使って敵軍に矢を放たせて回収する策を講じます。

引用:パリピ孔明別ウィンドウで表示します | © 四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会

ビジネスにおけるAI開発でも自社で1から開発するのは大変なので、他社を有効活用しましょう。
AIに関する情報や技術は公開されており、無償で利用できる開発ツールなどもあります。さらに他社と共同でプロジェクトを行ったり、成功や失敗における知見を共有しても良いでしょう。ただし商習慣を守り、下請法に抵触する優越的な地位を利用して外注先に業務を強いることは厳禁です。資金的に難しい場合でも、中小企業であれば官公庁や自治体などによる助成金があります。足りないものを智略で補う戦略は、三国志時代でも現代でも通用することはパリピ孔明で証明されているのです。

成功のカギはテック孔明と仲間たち

ここまで解説する中で、孔明のように「ビジネスにおける軍師」の役割を担う人材がいかに大切かが分かります。
そして軍師となる人材を外部から獲得するには然るべき人物に礼儀を尽くす「三顧の礼」、現代風にいえば「ヘッドハンティング」が行われます。

引用: DX白書2021 第3部 デジタル時代の人材別ウィンドウで表示します | 145ページより抜粋「国内・事業会社がデジタル事業に対応した3職種の獲得、確保方法」

では、「軍師」がいればAI導入で成功できるでしょうか。軍師だけでは戦に勝てないのも事実であり、パリピ孔明でも孔明のみならず周囲の人物が支え合っています。クラブのオーナーは熱心な三国志好きとして不審人物扱いされていた孔明を雇い入れ、才能に注目していた英子と孔明をつなぐきっかけを作りました。ラッパーのKABE太人は、孔明とMCバトルで戦って協力するようになり、終盤のとあるイベントで活躍しています。このようにパリピ孔明では、それぞれの得意な分野で強みや役割に応じて同じゴールを目指す場面が多く描写されています。

三国志における「赤壁の戦い」で劣勢を覆して勝利した孔明にとって、企業における3つの壁を打ち破る参考となる人物です。しかしながら、現実には軍師孔明もパリピ孔明もいません。
まずは本記事を読んだ方は、AI活用を推進する軍師としてITに詳しい「テック孔明」の役割を狙ってみましょう。そしてAI導入への賛同者を集めて、目標に向かって進んでください。ここまで読めば分かるとおり、三国志でも現代でも物事を成し遂げるには必要なものは智略と仲間です。兵法三十六計を巧みに使い、人を動かし敵を欺いてAI活用を成功させましょう。

この記事の著者

マスクド・アナライズ

ITスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスに関するSNS上の情報発信において注目を集める。同社退職後は独立し、DXの推進、人材育成、イベント登壇、ニュースサイト向けの記事や書籍の執筆などで活動。現場目線による辛辣かつ鋭い語り口で、存在感を発揮している。
著書に「データ分析の大学」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」「これからのデータサイエンスビジネス」がある。

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