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経理部門のDXのメリットとは?
次世代経理部門の課題は、他部署との連携?

#経理部門のDX

#DX活用例

DXで「攻めの経理」を目指す

日本企業の中でも比較的DXが進んでいるのが経理部と言われています。会計や経費精算のシステムやデジタルツールの導入を進めている企業も多くなっています。
この記事では、基礎的な経理部のDXがなぜ必要なのか、その理由とメリット、次のフェーズで必要となる経理部と他部署の連携について触れています。

経理部は特にプロフェッショナルな人材が多く属人的になりがちですが、これからの経理部は「企業の数字を管理する部署」から「企業の数字をもとに経営に役立つデータを提供できる部署」へと進化することが求められ、これができている企業とそうではない企業では、成長が大きく変わってきます。
競合会社に遅れを取らないためにも、ぜひ、ご一読いただき、経理部のDXをさらに進めるヒントにしてください。

経理部門は必ずDXを進めるべき!3つの理由

経理部門のDXは、クラウド型会計システムや経費精算などで比較的導入が進んでいます。改めて経理部門のDXの目的を確認して、導入したシステムやデジタルツールを使いこなせているかを確認しましょう。

押印文化や煩雑な承認フローなどの経理部門を取り巻く環境のイメージ

1. 企業の"数字"を明確にできる

営業部門であれば、売上目標とその結果、マーケティング部門であれば、広告費とその結果など、企業の経営には数字が重要な意味を持ちます。
経理部門は、売上やコストといった事業数字を管理することが主な業務になります。経理部門のDXを進めることで、この数字の管理を素早くかつ正確に捉え、理解することが可能となります。

2. 他部門との連携による業務効率化

経理部門は、営業部門であれば見積書や請求書、企業全体の経費精算や人事部門との給与計算、イベントなどを行う企業であれば、企画部門とのイベント費用などの他の部門との連携が必要で、これらをまとめて入出金管理をする必要があります。
この他部門との連携をシステムによってデータ統合することで、他部門の業務との連携がスムーズに進み、経理部門が担っていた、データ入力やチェックといった業務を効率化することが可能です。
さらに、業務を軽減することで、データ分析から経営に重要な指標を示すといった戦略立案に貢献した取り組みが可能です。

3. 経理中心のデータの利活用

これまでの経理部門は、企業の数字を管理することが目的でした。
DXを進めることにより、経理部門は進化して、企業の数字を経営に活かす部門へ変化することが可能です。
企業の数字を集めることで、例えば「残業時間と営業成績の関係」や「調達金額を下げることによる利益への貢献」など、経営者が知りたい情報を提供することが可能となります。

経理部門のDXを実現するためのサービス

以下のとおり、改めて経理部門のDXを実現させるためのサービスを紹介していきます。

クラウド型会計システム

経理処理業務のルーティンワークは、入出金管理はもちろん見積書の発行、請求書の発行、売掛金の管理、経費の支払いなど、シンプルに言えば企業のお金を管理する業務です。この経理処理業務は各社さまざまで、Excelで管理しているところもあれば、ERPと呼ばれるパッケージシステムで管理していたり、パソコンにインストールする経理ソフトを使っていたりするため「事務所のパソコンでしか業務ができない」となるわけです。

この経理処理業務で先端を行くのが「Freee」や「マネーフォワード」に代表されるクラウドサービスです。
クラウド型会計システムのメリットとしては「インターネットにつながっていれば仕事ができる」「最新のアップデートで法改正に対応」「データ連携により情報の反映や仕分けが簡単」「リアルタイムで経営状況がわかる」などが挙げられます。
経理業務をネット上で管理することでリモートワークに対応できるのはもちろん、給与計算や経費精算と連携して業務プロセスの明確化も可能です。

クラウド型経費精算システム

出張費や会議費、交際費など、企業活動に必要な経費をまとめて処理する経費精算は「期日までに経費申請がない」「申請方法が間違っている」「経費の用途が不明」など、業務の進行を妨げるトラップが満載です。これらの業務を楽にするサービスも多く出ました。
領収書やレシートをスマホで撮影して提出できたり、交通ICカードと連携しスマホ1台で申請でき、管理側も承認が可能な仕組みもあります。他にも「楽楽精算」などのサービスが有名で、紙不要で業務がスムーズに進むため、ペーパーレス化を進めるうえでも導入を検討すべき分野です。

経費精算システム導入のメリットは、申請者側は「交通費精算が楽になる」「領収書を撮影すれば申請できる」などが挙げられ、経理部側では効率化につながり、会計システムと連携でき、申請側も承認側も対応が楽になるなど双方によい効果があります。申請時のミスが減り、チェックが効率化されれば、運用が楽になり、経費の削減や社内統制の強化につながります。

管理会計システム

管理会計業務は日々の企業活動が反映され、経営に活かされる分野です。しかし、日々の業務に忙殺され、なかなかできているところはありません。
管理会計には「予算管理」と「原価管理」という、主に2つの側面があります。

予算管理
中長期的な予算を管理することで、企業活動に必要な資源(人・モノ・カネ・設備)などを最適化できる。
原価管理
製造業で言えば、仕入れや材料費、サービス業でも外注費などを管理することで、高品質・低コストの材料や取引先を見つけ、一つの商品にかかる原価を安定化できる。

管理会計は経理部単体の業務ではありませんが、経営側はこの分野も求めています。
会計が適切に管理され経営判断をスピードアップできれば、業績に貢献することは間違いありません。スピード感のある管理会計を実現するためにも、IT化とデータ統合は欠かせない要素です。
経理システム単体では難しいかもしれませんが、状況に合わせて環境を改善、場合によっては新たなシステムを構築することで経営に資する経理部に転換する時代が訪れました。

RPA / AI

経理部門の仕事でルーティンワークを解消するためのサービスとして、RPAを導入する企業も増えています。RPAとは、ロボティクスプロセスオートメーションの略で、入力業務などの繰り返し行う作業を自動化するサービスです。
例えば、「データ入力作業」「ファイルのアップロードや保存」「定期的なメール配信」などに活用できます。

これらがさらに進化したものが、AIの活用になります。これは、チェック作業や大量のデータ分析などに役立ちます。
例えば、経費精算作業で申請されている書類が正しいかを判断するチェック機能や、毎月の経理データを分析して経営資料に落とし込む分析機能などをAIに任せることができます。

経理×○○部門のDX

経理部は他の部門との連携で、よりDXを進化させていくことができます。
上記でも触れていますが、改めて、他部門との連動性を紹介したいと思います。

経理部×営業部

営業部と経理部との連携は、多くの企業に当てはまる関係ではないでしょうか。
営業部が作成する見積書・請求書・発注書や関連する経費(交通費・出張費・交際費)は、経理部とデータを連動することで、業務改善につながります。

私のクライアント企業では、経費節約をうたっていましたが、何がどの程度無駄になっているかを理解できていませんでした。
営業部の諸活動と経理部がデータ連携することで、交際費ならいくらまで、出張費ならいくらまで、それ以上は、先方に了承のうえで、リモート対応にするなどの措置をとることで、具体的なルールとともに、経費削減をすることができました。

このように営業部の活動と経理部を連動させることで、経費削減の具体策につながり、また、請求書の受け取りや発行に合わせた入出金の管理も容易になります。

経理部×商品管理・物流

経理部にとっては、商品管理や仕入れの部分も大事な管理要素となります。そこで連動するのが、企業によって様々な呼称がありますが、商品管理や物流部門ではないでしょうか。

一つの商品を作るためにどれぐらいロスが出ていて、不要な在庫が発生しているのか、原価を下げるとどれぐらい利益が上がるのか、といった視点で見ると、社内でも数字に強い経理部とのデータ連動が欠かせません。

製造、物流、小売などの業界では、特に重要な要素になります。
商品を提供する際にどこがロスになっていて、どこが改善ポイントになるかを売上データや顧客データなどと俯瞰してみることで、社内の改善に役立てることができます。

経理部×経営企画

前半でも少し触れましたが、次世代の経理部は「データを活用して、経営に役立つ組織」となることが理想です。

先の営業部の事例を出すと、残業代と売上の関係、経費と売上の関係、調達の原価や広告費用と顧客獲得の関係など、それぞれの部署で管理しているデータを経理部で集約することができます。

これらのうち、経営企画や経営幹部が必要な情報を設定して、毎週や毎月のレポートとすることで、経営判断が早くなり、また次の一手をレポートの数字をもとに考えられ、新たなビジネスモデルが生まれる可能性へとつながります。
企業経営を支えるためにも、経理部が進化することが望まれます。

経理DXの成功事例

手作業をシステム化して月の締め時間を数日単位で削減

導入企業:株式会社INFASパブリケーションズ

導入内容

月の販売の締め業務を経理データと連携して、現場業務にかかる時間を数日単位で短縮。

導入背景

10年以上使っている古い販売管理システムをリニューアルするまでは、月次の販売数を締めるときに、データを出力して、Excelにまとめて、システムでは管理できないデータを手作業で集計して経理システムに投入していました。
そのシステムを再構築して、経理データと連携することで、業務を簡素化できないかという狙いがありました。

導入効果

これまで、システムを使っているとはいえ、合計金額の計算やデータの受け渡しなどは、手作業で行っていたので、独自にシステムをリニューアルすることで、締め作業がボタンひとつで行えるようになり、大幅に時間を短縮することができました。

出典:株式会社日淺事例

請求業務時間を1/10にまで削減

導入企業:ラクスル株式企業

導入内容

請求業務時間を1/10に大幅削減。物流プラットフォーム「ハコベル」との連携で請求業務を実質ゼロに。

導入背景

もともと「ハコベル」上の請求書をすべて印刷して郵送する対応を行っており、毎月かなりの時間かけていました。
自社の配車管理システムを新しいシステム「ハコベルコネクト」に切り替えるタイミングで、この作業工数を削減できないかと思い郵送代行まで含めて導入検討を始めました。

導入効果

「楽楽明細」と新システム「ハコベルコネクト」への切り替えにより、請求業務時間を1/10にまで削減することができました。

出典:「楽楽明細」×「ハコベル」連携事例別ウィンドウで表示します | ラクスル株式会社

予測分析で在庫ロスを減らす

導入企業:小売業者A社

導入内容

店舗の商品の売り上げを予測して在庫をコントロールすることで在庫切れや売り逃しを減らし、さらに予測作業の時間を短縮。

導入背景

店舗では、各商品の売り上げや販売数を精度よく予測することは大切です。予測に基づいて商品を発注し、決められた期間でそれらを販売する必要があります。しかし、販売数予測の精度が低いと、問題になります。
多く予測しすぎると在庫コストや廃棄につながり、少なく予測しすぎると販売機会を逃してしまいます。

導入効果

予測分析により、直近一週間の予測販売数を予測し、予測結果に基づいて発注を行います。

  • 販売数予測の精度向上による在庫削減、販売機会確保による、店舗の業績の改善
  • 予測作業の短時間化や自動化

が可能になる。

出典:店舗の商品販売数予測別ウィンドウで表示します | Prediction One

まとめ

いかがでしたでしょうか。
経理部門のDXを見てきました。ほぼすべての企業に存在する経理部は、最初にDXに着手しても良い部門になります。

具体的には、以下の手順を目指しDXを推進していきましょう。

  • IT化から始め、業務効率化・生産性を向上
  • 各部門と連携することで正確な経営数字を取りまとめる「守りの経理」を実現
  • 経営指標を指し示す「攻めの経理」へ変革

コロナの影響によるテレワークの浸透や、2022年から始まった経済産業省による「電子帳簿保存法」、2023年から始まるインボイス制度への対応で既にクラウドサービスを利用している企業も増えています。
今後の課題は、それらを他の部門と連動し、データを活用することです。

経理部のDXがまだ完了していなくても問題はありません。先行企業の事例も豊富でシステムやデジタルサービスも充実している分野なので「少しでも手間を減らしたい、業務効率化したい」と検討中の企業は、資料請求が成功への大きな一歩です。

すでに経理部のDXを進めている企業は、今度は一歩踏み込んだ、他部署との連携などを工夫して、数字をもってビジネスに貢献し、企業の成長を支えていく部門へ進化することを目指してみてください。

この記事の著者

日淺 光博​

DX専門コンサルティングファーム・株式会社日淺代表取締役社長。DXコンサルタント。​2012年に起業。財団法人九州経済調査協会アドバイザー、三越伊勢丹グループ会社顧問などを歴任。​DXコンサルタントとして、直近2年間で50社以上のDXプロジェクトに関わり、現在に至る。​
著書に「難しいことはもういいんでDXがうまくいく方法だけ教えてください別ウィンドウで表示します」がある。​

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