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事例

社内データの持ち腐れを避けるには?
DX実現に向けたデータ活用の目的や方法を網羅しました

#データ活用

「社内のデータを戦略的に活用するにはどうしたらいいの?」
「膨大なデータを活用する方法がわからない」
「データを活用できる人材がいない」

こうした悩みに答えるために、データ活用のメリットから目的、その方法、人材育成まで網羅的に記事にしました。
企業の成長のためにも、デジタル競争に負けないためにもこれからの企業はデータ活用が必須の条件といっても過言ではありません。
この記事を読んでもらえれば「データ活用とは何か」の理解が進み、企業経営のヒントになると思います。

なぜ、DXにおいてデータ活用は重要と言われるのか?

経済産業省から発表されたDXレポートによると、既存システムの刷新を集中的に推進しなければ大きな経済損失を生じる可能性があると言われています。
ブラックボックス化、複雑化された既存システムを放置しデータ活用ができない場合、以下が懸念され、会社経営に深刻な影響を与えます。

  • データが活用しきれずDXを実現できないため、市場の変化に対応してビジネスモデルを柔軟・迅速に変革できずデジタル競争に負ける
  • システムの維持管理費が高額化し、IT予算の9割以上を割くことが予想される
  • 保守運用の担い手不足で、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失などのリスクが高まる
引用:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~ | 「2025年の崖」別ウィンドウで表示します

データ活用を前提として既存システムのテコ入れを行えば、DXの実現に大きく前進します。

今までは社内でのやり取りの際に、起きた事象に対して人の知見があり共有されるという流れが主だったものでした。それがデータを適切に管理して活用が進むと、この人の知見部分を裏付けるデータを組み込むことができ、組織をまたいだ情報共有も楽になっていきます。
また、社外でのやりとりでも、数字やグラフなどのデータを介したやり取りをすることで、正確かつ迅速に取引が可能です。

データ活用によって何が分かるのか?

経営指標となる数字

データを活用することで、経営者にとっては大きなメリットがあります。それは、経営の状態を数字で管理できることです。これにより、無駄な投資や費用削減が期待されます。
これまで、経営者のカンや数カ月前の数字を元に意思決定してきましたが、データを活用することでよりスピーディな経営が実現できます。
最近では、BI(ビジネス・インテリジェンスツール)もより進化を遂げ、経営者にとっては会社の経営状況がひと目で分かるようにもなっています。

顧客との関係性

社会全体でみると顧客の多様化が進み、その人に合った提案をすることが求められています。
その際に、顧客データの活用が非常に役立ちます。CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)という分野になりますが、これを活用することで、会社と顧客のより良い関係性を構築できます。
また、データを元にアプローチをすることで、既存の顧客に対して優良顧客へと導くための施策もよりやりやすくなりました。

社員が働く環境

データの活用が進めば、人事評価や勤務状況も一目瞭然です。
上手に活用して、会社が従業員一人ひとりに合わせた働き方を提案することができれば、従業員は活躍の場を広げることが可能です。

データ活用によるメリット

データドリブンな経営

何が分かるのかという点でも触れていますが、データドリブンな経営ができることです。データドリブンとは、企業活動を数字で表し、それを元に戦略的な意思決定をするという手法です。
特に顧客に関わる点で、より良いサービスを提供することを目標に、データを調べて整理することができ、顧客に合ったアプローチができます。
具体的には、見込み客や顧客へのメッセージをより細かく設定でき、究極的には、その人個人に合ったアプローチをすることができます。

新たなビジネスの立案

営業マン一人ひとりが少しずつしか売れないが、総量で見たら相当量の数が販売できている商品があれば、その商品の評判などを分析して、販促キャンペーンを実施できます。
また、顧客からの問い合わせを調べて整理したら、同じような悩みが浮き彫りになることが、データ調査などで発見されることがあり、その悩みに合わせた商品を開発することも可能です。
データ活用を進めることで、こうした企業活動の中身を正確に調査して新たなビジネスにつなげることができるようになります。

データに基づく評価

先にも書きましたが、業務の計測がうまくできていれば、客観的な事実として人事評価をすることができます。
従業員一人ひとりの個性も評価の対象となる場合は、データがすべてではないですが、感情的な評価や人間関係のみでの評価に陥らないためにも、データを元に評価することで納得感を生み出すことが可能です。

業界をまたいだエコシステムの構築

サプライチェーンなどに影響を受ける業界の場合、どこに歩留まりが出ているかを特定し、生産計画を見直し人員を最適に配置していくといった計画が業界全体をとおして、考えられていることがあります。
その際に、生産量などのデータを元に見直しや新体制への変革を検討することで、より良いエコシステムを構築することができます。
こうした体制に対応するためにも、社内で工場などがある場合には、生産量などを管理するための仕組みを導入する必要があります。

データ活用に関わる技術

クラウド化の活用

データ活用で欠かせないのが、クラウド化の技術です。
企業活動で利用するデータ(顧客データ、販売データ、営業データ、従業員データ)などを個別に管理するのではなく、クラウド上で一元管理して、分析ツールなどで営業情報や販売情報などを活用できるようになります。
古いシステムの場合は、新しいデータを活用するために都度何百万〜何千万の改修が必要ですが、クラウド型では、古いシステムほどの大きな改修がなくデータ活用の仕組みを構築ができるので安心です。
また、近年では常にアップデートされているため、セキュリティの面においてもデータの保管先としてベターな場所となっています。

AIの活用

データ活用で欠かせないのが、AIの活用になります。
AIというと難しく聞こえるかもしれませんが、この場合は、作業の自動化と読みとってください。
先程から何度か伝えているように、データを一元的に管理して経営指標として見える化する際に、特に以下の2点でこのAIは非常に役立ちます。

属人化の解消

AIは人が経験値でやっていた仕事を代わりにやってくれたり、業務フローの中にAIを組み込むことで、経験値で差が出ていた業務の幅を縮小したりすることが可能です。
ある企業の営業部隊だと、AIがその時期に合わせたアタックリストを作成して、営業部門全体で手分けしてあたり、成果を上げています。
こうして、これまで属人化されていた業務を均一化することで、全体として成果が上がることが期待できます。

業務効率化

もう一つ期待できるのが、業務効率化です。
特にデータ分析に関しては、人よりも得意なAIがやることで業務の効率化に繋がります。
例えば、今の状況から数カ月~1年後の売上数値を予測したり、広告効果を最大化するためのヒントを示したりと、人が手動で調べなくてもAIを活用することで、予測値を自動で出すことが可能になります。
画像判別や販促キャンペーンの提案など、AIができる範囲が大きく広がっているのが現状です。

ディープラーニング

ディープラーニングを技術的に話すと細かくなるので、ここでは、AIをより使いこなすための技術と定義します。
例えば、自分の使っているスマホの予測変換が自分の癖を覚えて、候補となる変換予測をより正確にしていく体験をした方がほとんどだと思います。これがディープラーニングの技術の一環になります。
企業活動において、AIに読み込ませるデータを精査し育てていくことで、予測値がより正確になり、提案できる販促キャンペーンの幅が広がったり、画像解析の精度が上がったりすることが期待できます。
その結果、より正確な経営や販促ができ、企業の業績に寄与できるようになります。

データを扱う職種例

DX推進役(CDO・Chief data officer / データプロジェクトマネージャー)

データ活用の利点を記載してきましたが、データ自体は単なる数字でしかないともいえます。それを経営や販促などに結びつける役割が、DX推進役になります。
とある保険会社では、事故現場の数十万点の画像データを解析して事故が起こりやすい道路を特定し、事故後の対応に活かしています。これらは、データを元にして何に活用するかを考えるDX推進担当がいて、初めてできた仕組みになります。データ活用をする際にその利便性がわかり、データの活用方法を特定する役割の人ないし組織がDX推進役になります。

DX組織について、詳しくは「DXの成功率が圧倒的に変わる!DX組織の役割と運用方法を徹底解説」もご覧ください。

データサイエンティスト

ビジネスに貢献できるデータの活用方針が決まったら、それをどのデータを利用してどう活かしていくかを設計するのが、データサイエンティストの役割になります。
アメリカでは人気の職業で、若くして年収が1,000万を超えることもありますし、また日本の大学では、筑波大学を筆頭にデータサイエンティストを育成するための流れができています。
比較的新しい職業ではありますが、データ活用の重要度が増す世の中において、今後、求められる職業となっています。

データアナリスト

データアナリストは、データサイエンティストがまとめた設計を元に具体的にデータ分析の仕組みを構築して、見える化する役割になります。場合によっては、データサイエンティストが担う場合がありますが、役割的にはデータアナリストが実装を行います。
データベースにある情報をまとめて、関連付けて、BIツール上の画面に数字をわかりやすく表示することまでが仕事になります。

マーケター

商品が売れるための戦略を練って施策を打ち、そこから得られるフィードバックを次の施策にどう活かすかが、マーケターの仕事です。
これらの一連の流れはデータ活用と非常に相性がよく、先程紹介したAI活用にも繋がります。
企画を考えるだけのマーケターではなく、データに精通していればより良いですが、先に挙げたデータサイエンティストやアナリストと協業して働くことが今後のマーケターの比重が増えていくことになります。

データ活用を実行するための5ステップ

STEP1. データ活用の目的を設定

データ活用の主な目的は、以下のとおりになります。

  • 数字を元にした客観的な経営指標
    場合により、視覚的な方法でデータ分析を提供することで、より迅速で適切な意思決定の補助
  • 販促キャンペーン
    広告予算を最大化するための販促施策
  • 将来予測
    現在の数字を元にした将来的な経営予測
  • 業務改善の指標
    何らかのアクションが必要な業務の問題を特定し、場合によっては推奨される修正アクションを提供する
  • 市場調査および分析
    潜在的な顧客の習慣に関するより良い認識
  • 競合調査および分析
    競合他社に対する優位性の提供
  • 既存顧客への改善提案
    顧客データから顧客へのより良い提案を提示

STEP2. データ分析チームを組成

  • 現状の信頼性のあるデータを準備
    1次データ:自社で保有している顧客や販売などのデータ
    2次データ:調査会社から購入データ独自に実施したアンケートデータ
    3次データ:自治体などから出ているオープンデータ

これらを活用してデータの準備をしていきます。

  • データ設計
    データの準備と設計は何度か行き来しますが、集めたデータを元にして設計していきます。
    データ活用の目的は先の工程で決まっていますので、それに合わせてデータを収集しつつ、どのようなアウトプットが良いのかを検討して設計していきます。

STEP3. 現時点のデータの統合と分析

設計とデータの準備が終わったら、データ分析ツールなどを活用してデータをセットしていきます。
ここでは、一から式を組み上げる方法もありますが、データ分析ツールを活用して見える化するまでを最初に実施することをおすすめします。

STEP4. 経営や顧客、社員との接点をデジタル化

続いて、継続的にデータを取得するために、経営や顧客、社員との接点をデジタル化していく作業になります。
従業員の管理であれば、エクセルや紙で実施していればクラウドツールを導入してデジタル化したり、顧客との接点をデジタルツールに移行したりする必要があります。
変えるために大型の投資をする必要はないので、業務改善のためのDXと合わせて変更していくことをおすすめします。

STEP5. 継続的な指標の改善

当初設計したものから取得できるデータが増えると、指標も多様化していきます。
その都度、必要な指標を増やしたり減らしたりして、会社の状況に合わせて変えていくことが望ましい姿です。

データ活用による成功事例

城崎温泉

城崎温泉は、兵庫県北部にあります。温泉めぐりを楽しむ観光地です。
ここでは、ICカードを使って「ゆめぱ」という外湯券を発行します。そのデータからどこにどれぐらい滞在していたのかなどの行動データを取り、それに合わせてイベントやキャンペーンを企画して町おこしを推進しました。
個人の特定などにも配慮して、ITを活用した町おこし事例としてメディアなどにも多く取り上げられている事例です。

株式会社ワークマン

ワークマンは、全社員にエクセルでのデータ分析を覚えてもらい、業績に貢献しています。
その成果が、22カ月連続の2ケタ成長。データを活用して、店頭での発注業務までを2時間から10秒へ縮めた実績があります。
高度な専門ツールを一部の社員だけが利用するのではなく、全従業員がエクセルを使いこなすという施策でうまくいっている例です。

b8ta(ベータ) Japan

店頭で商品を展示して、そこに足を運んだお客様の情報を取得することを価値としているb8ta(ベータ)社。アメリカ生まれの企業ですが、昨年、日本に上陸して話題を呼びました。
ここでは、メーカーが出品するβ(ベータ)テスト中の製品や最新製品の陳列・接客・配送を行うほか、出品企業にストア内のリアルタイムデータを提供して、より良い商品へとフィードバックするための会社で、データ活用そのものを商品として販売しています。

喫緊の課題はデータ人材育成

現在、データサイエンティスト協会によると、日本全体でも5万人以上のデータ人材が不足していると言われています。いざデータ人材を育てようと思っても、なかなか一筋縄ではいきません。

そこで、企業が自前でデータを活用するための3つの方法を提案します。

1.「まずはエクセルを覚えて自社で育てる」

近年、作業現場のノウハウを元に「ワークマン女子」などの流行を生み出しているワークマンですが、こちらの会社は全社員にエクセルを覚えてもらい、データ活用を進めていることでも有名です。
データ分析の基本はエクセルでできることがほとんどなので、自社でデータ分析を進めたい場合は、最初の一歩としてエクセルの使い方を覚えてもらいデータ分析を実施する方法が比較的とっつきやすい方法です。

2.「データ分析ツールをとおして分析方法を覚える」

近年のデータ分析ツールは、使い方も易しいものが増えています。フル活用するにはそれなりの知識が必要ですが、まずは簡易的に使用することで、分析ツールをとおしてその方法を学んでいく方法があります。
数カ月時間はかかりますが、分析ツールには様々な分析手法がすでにセットされているので、それを元にデータ分析の考え方を学びつつ、人材育成を兼ねるという方法もあります。

3.「データ人材育成プログラムの活用」

データ人材育成プログラムと検索してもらうと様々なプログラムがあります。それらを活用して、人材を育成するのも一つ。
研修費用はかかりますが、将来を見越してデータ人材を育てておくことも必要な投資になります。

番外編:やはり外部に頼る

自社でデータ人材を育成することが難しい場合には、素直に外部に頼ることも一つです。
その際に、分析ツールを活用してデータのセットや使い方を教えてもらいつつ、1年ぐらいかけて自社の従業員だけで扱えるようにする方法もありです。
無理に一から自社で育成して、その人が何らかの事情で辞めてしまうと投資が無駄になるので、安全策を考えるなら費用はかかりますが、外部活用をおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
企業のデータ活用はまだまだ始まったばかりで、日本でもこれからの分野です。ただし、データ活用は性質上、長い期間取り組むほど経営に対して貢献できる度合いがより大きくなっていきますので、小さくても早めのスタートをおすすめします。

この記事の著者

日淺 光博​

DX専門コンサルティングファーム・株式会社日淺代表取締役社長。DXコンサルタント。​2012年に起業。財団法人九州経済調査協会アドバイザー、三越伊勢丹グループ会社顧問などを歴任。​DXコンサルタントとして、直近2年間で50社以上のDXプロジェクトに関わり、現在に至る。​
著書に「難しいことはもういいんでDXがうまくいく方法だけ教えてください別ウィンドウで表示します」がある。​

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