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事例

小売業界のDXとは?
業態別の事例と小売DXの始め方を大紹介!

#小売業界のDX

#業種別DX

#DX活用例

「普段の業務が忙しくてDXはわからない」
「ECをどう展開していけばいいか?」
「小売業のDXは何からはじめていけばいいのか」

と悩んでいる経営者の方、DX推進担当の方向けに小売業全般のDXについて解説しています。

小売業が抱える課題を解決する技術や事例も紹介していますので、ぜひご一読ください。

小売業が抱える問題点とは?

人手不足

労働人口の減少により、働き手の減少が大きな課題となっています。
パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」の調査では、卸売・小売業界では2030年に約60万人の人材不足が出るのではないかと予測されています。
人手不足の要因としては、「給与の低さ」「長時間労働」「デジタル化の遅さ」などが挙げられ、労働環境の改善が急務です。

産業別にみた人手不足

産業別にみた人手不足のイメージ

引用:株式会社パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」別ウィンドウで表示します | 「産業別にみた人手不足」

ECサイトの活用

新型コロナウイルスの影響により、消費者の行動が大きく変容し、店頭に買い物に行かずにEC・ネットショップでの買い物が増えました。

BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)

BtoC-EC市場規模の経年推移のイメージ

引用:経済産業省「令和3年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」別ウィンドウで表示します | 「BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)」

2021年の取引高は、20.7兆円と前年から大幅に向上し、ますます消費者がネットで購入する時代になっています。
小売業においては、店頭での販売戦略だけではなく、ECへの対応も新たなビジネスチャンスとして注目していく必要があります。

顧客に合わせた商品選定

こちらも顧客の行動変容になってきますが、近年では「パーソナライズ化」が小売業のテーマになっています。
これまである一定のブームによりマス向けの商品開発が主流だったところが、SNSの発達により、顧客は自分にあったものをある程度探せる状況になりました。
これにより、大量消費・大量生産の時代が終わり、個々人にあった商品やサービスを提供していく時代へと変化。小売業界は、この流れに対応していく必要があります。

課題を解決する注目の小売業DXのキーワード

D2Cの活用

D2Cとは、Direct to Customerの略で、直接顧客に商品を届ける手法を指します。
これまでは、百貨店やスーパー、量販店などを介して顧客に商品を届けていたところを、例えば、メーカーが直接顧客に販売する。生産者が直接顧客に産直の商品を届けるなどといった事例です。
DXを進めるうえで、新たな販路開拓という点だけではなく、直接顧客に商品を届ける手段として、D2Cへの取り組みは注目されています。

来店者行動からのデータ活用

B8TAなどの企業に代表されますが、カメラを用いて来店者の行動データを収集し、陳列や商品の仕入れに活かすのがこの手法です。
プライバシーに配慮する必要がありますが、近年この手の手法がメディアに取り上げられたことにより、導入する小売店舗が増えてきました。ある企業では、来店者のプライバシーに配慮して棚に向けてカメラを設置し、商品の減り具合を調査。日々の陳列に活かしています。
このように、来店者の行動をデータ化して商売に活かす手法も広がっています。

多様化した決済の導入

国をあげてのキャッシュレスの推進により、既に多くの小売業で導入が進んでいます。決済手段を複数持つことにより、顧客の流出を防ぐ効果があります。
決済手段は、○○ペイをローンチする企業が落ち着いてきましたので、これからは、他社に遅れをとらないための守りのDXとして、一定期間ごとにアップデートしていく必要があります。

在庫管理・発注業務の自動化

小売業では、在庫管理や発注業務は日々のオペレーションでも重要な仕事になります。これらを人の手で頼るのではなく、受発注業務をシステム化して、人的ミスの軽減や長時間労働を防ぐ対策が求められています。

出店戦略

出店戦略を考える際に、データが鍵になることがあります。
自社で保有する顧客データや既存店舗情報と第三者が提供するオープンデータを組み合わせて、人口や交通量、土地柄、産業情報などを見れば出店後の売上との相関関係を導き出すことは可能です。眠っているデータを活用していくと新店舗の成功確率を高められるのです。

販促戦略

過去のキャンペーン動向からタイアップや値下げなどを行った際の効果を予測し、販促を最適化することも可能です。期間・費用・場所などのキャンペーン情報を分析し、全店舗一括ではなく「この店舗にはこのキャンペーン」などの施策を実行できます。
また、レシートやくじ引きなどでクーポンが発行される場合「この商品を買った顧客には、このクーポンが最適」といった設定も可能なので、クーポン販促効果も高められます。

外商改革

百貨店やコンビニ・スーパーの法人営業にも関わることですが、特に百貨店では、お得意様向けの「外商」があります。外商では顧客ごとにどんな商品をおすすめするかが重要で、アフターコロナでは小さな拠点を設けて特定地域の富裕層向けに外商営業を行うことも考えられます。
データ活用を進めれば、勘や経験値に頼らずお得意様に最適な商品を提案する力を高めることが可能です。さらに、実際に商品を持っていかなくても、仮想試着や3D撮影によるサイズ測定などを実施し、その人にピッタリの提案もできるでしょう

業態別の事例8選

スーパー

トライアルホールディングス

九州を中心にスーパーを展開するトライアルホールディングスは、店舗のDXをどんどん進めている企業です。
特にメディアなどに注目されているのが「スマートショッピングカート」。キャッシュレス決済機能付きタブレットを搭載した買い物カートで、RetailAIの納入実績はこれまで51店舗で合計約5,300台あります。

イオンリテール株式会社

イオンを展開するイオンリテールが展開する「レジゴー」は、顧客自身が貸出用の専用スマートフォンで商品のバーコードをスキャンし、専用レジで会計するイオンの新しいお買物スタイルです。
デジタル技術を活用しながらレジの並びを減らし、新しい買い物体験を提供しています。

コンビニ

Amazon.com

Amazonが展開する無人コンビニ「Amazon Go」が都内で徐々に広がってきました。Amazon Goは、無人決済方式の店舗で店舗に入ってから商品を手に取り、店舗を出るときに決済が完了するという仕組みです。
人手不足を解消する方式としてまだ検証段階ではありますが、今後は店舗も広がっていくことが予測されています。

株式会社ローソン

ローソンでは、2021年にマイクロソフトと提携して、AIを活用して業務効率のアップを図ることが発表されました。
検証実験では、店内にカメラやマイクを新たに設置し、売場の通過人数や来店客の滞留時間や商品の購入率などをデータ化。分析したデータを参考に「お客様にとって買いやすい売場の実現と店舗の利益向上を図る」(同社)のが目的と語っています。

ドラッグストア

株式会社ツルハホールディングス

ツルハドラッグは、全国1,350店舗を展開するメガチェーンです。
2020年6月、itsmonレシートをチェーン全体で導入。itsmonレシートは、購入者がレシートで簡単に応募できるキャンペーンシステムです。
ドラッグストアは、販促キャンペーンを断続的に実施することで、顧客の来店頻度や店舗の長期利用を増やす施策を中心に展開しています。itsmonレシートを導入することで、顧客が購入したレシートから自らキャンペーンに応募することができ、新たな顧客体験を提供しています。

株式会社薬王堂

ドラッグストアでは、顧客のポイントでの囲い込みのための自社アプリを開発して、展開している企業が多いです。
自社アプリをインストールしてもらい、プッシュ型でリアルタイムのキャンペーンに参加を促したり、消費者の情報を収集しながら、次の販促キャンペーンに活かしたりすることができます。

アパレル

FABRIC TOKYO

オーダースーツを展開するFABRIC TOKYOは、デジタルを活用して伸びている会社です。アプリでオーダースーツを展開して、顧客に直接商品を販売するアパレル業界でも先進的なDXを行っています。
さらに、自社の経験を活かして、パートナー型コンサルティングサービス「RETAIL X」を展開しています。D2Cブランドの新たな立ち上げや、リアル店舗とECの垣根をなくすOMO(Online Merges Offline)の構築など、企業の経営課題であるDXへの対応を支援するコンサルティングサービスを提供しています。

ベイクルーズグループ

ベイクルーズグループは、ファッションを主軸にしながらインテリア、フィットネス、飲食の4事業を展開しています。ブランドは約75あり、うち約半数がファッション領域です。
ファッション自社ECサイト「BAYCREW'S STORE」を運営しており、2021年8月期のEC売上高は545億円と前年から6.8%増収しており、EC事業がコロナの影響を食い止めることになりました。
顧客の体験価値向上に注力したDXと銘打って、データ分析を進めてきました。利用者一人ひとりにあったブランドや商品を紹介して、満足度をアップした結果が、ECからの売上につながっています。

小売業をDX化するためのステップ

DXを活用した中期計画の策定

小売業はトレンドが大きく変わっていくので、小売業界の場合の中期計画は、会社内部での業務改善と顧客接点の部分を集中的に考えてみることをおすすめします。
3年後の姿を目指してなりたい姿を描きつつ、会社の体制をどうしていきたいか、顧客との接点をどう増やしていくかを検討していくことをおすすめします。

現在の課題を洗い出す

中期計画を策定したうえで、その目指す姿と現実のギャップを課題として洗い出す必要があります。
課題を洗い出す際には、経営計画とリンクして進める必要があるので、付箋などを使いロジックツリーを作ることを推奨します。
また、現在の業務フローを可視化することで改善点が見つかるので、業務フローを書くこともおすすめします。

DX化することで実現したいことの浸透と明確化

上記で課題と業務フローなどの可視化が明確になったら、DXを進めるうえでのアクションプランを作る必要があります。例えば、TOYOTAが推奨するような小さな改善を各現場で起こしていくことです。
その際に、各現場には改善意識を持ってもらうために、DX後の会社の姿を粘り強く伝えて、浸透させていく必要があります。

経営課題に合わせて課題と要望の優先順位をつける

アクションプランが上がってきたら、経営課題や現場での要望の強さなどを加味して、優先順位をつけていく必要があります。
すべての改善を同時に進めることは難しいので、まずは、自社で完結できるところから小さく始めて成功体験を積んでいくことがポイントです。

業務管理などの取り組みやすいところから始める

自社での業務管理などの優先順位を決めたら、現場での取り組みをスタートするフェーズです。
どのサービスがいいのかなどを悩むことがあると思いますが、以下の3点を基準に選ぶことをおすすめします。

  • 無料お試しができるか
  • 他のITサービスと連携できるか
  • 補助金が活用できるか

そして、いちばん重要な選定の基準は「現場が楽になる」と感じてもらうことなので、現場の方の意見も聞きながら、DXの取り組みを始めていきましょう。

EC事業を立ち上げるための5ステップ

EC事業を立ち上げようと思っても、なかなかできていないという企業もあるかと思います。ここでは、EC事業を立ち上げるためのステップをまとめていきます。

STEP1. EC事業で実現したいことの戦略化

EC事業と言っても、店舗で展開しているものをそのままEC化してもなかなか実現できません。EC戦略のポイントは、どういった顧客へどんな商品を展開するかといった戦略です。
ビジネスモデル化と言ってもいいかもしれません。特に、既存顧客からヒントを探して「同様の顧客が全国にどれぐらいいるのか?」「顧客が自社ECで購入してえる理由は何か?」といった顧客視点を持ち、ECで実現したいことを考えましょう。
また、集客する方法やブランディングなども一緒に考えていく必要があります。

STEP2. ECで販売する商品の(仮)選定

上記の戦略化が進んだら、次に商品の選定です。
場合によっては、1品だけを押し出して販売することも考えられます。商品によってECの成功の可否が決まってくるので、重要なステップです。
なぜ、仮にしているかというと、次の競合調査にて、別な商品を選ぶことも視野に入れておく必要があるからです。

STEP3. 競合リサーチ

ECの世界では、全国の企業が競合します。顧客が全国に広がることがメリットでありますが、別な視点でいうと、全国に競合が広がることになります。
ECの世界では、ステップ2で考えた商品が売れているのか。競合はうまくいっているのかをリサーチして、商品選定が間違っていないかを考える必要があります。

STEP4. ECショップの展開

商品選定と競合調査が終わったら、展開するECを選ぶことになります。出店方法は、以下の方法になります。

楽天やAmazonなどのショッピングモールへ出店

メリット

すでに会員がいるショッピングモールへの展開になるので、顧客獲得のハードルが低くなる傾向にあります。

デメリット
  • 販売手数料がかかる
  • ECページ上での商品の表現などで制限がある

などのショッピングモール上でのルールに縛られることがあります。

BASEやShopifyなどのECクラウドサービスの活用

メリット

1から開発する場合とWordPressやWixといったCMSを利用する場合があります。
自前でカスタマイズしやすく、自社の他のシステムと連携するなどの自由度を高く運用すること可能です。

デメリット
  • 開発費用がかかる
  • 導入まで数カ月かかる

などの導入までの費用と期間がかかることが挙げられます。

STEP5. 集客 / マーケティング

自前のECショップを開いた後は、集客とマーケティングになります。リスティング広告やSNS広告、コンテンツマーケティングなどの手法を駆使して、顧客を自社のECへ継続的に誘導していきましょう。

まとめ

いかがでしょうか。
小売業の課題から注目の技術と事例を紹介させてもらいました。
小売業は、特に顧客の行動変容が大きく影響している業界でもあり、店舗のDXとECの活用が突破口になります。

まずは、中期計画をもとに業務改善などを中心に小さく始めてみることをおすすめします。

この記事の著者

日淺 光博​

DX専門コンサルティングファーム・株式会社日淺代表取締役社長。DXコンサルタント。​2012年に起業。財団法人九州経済調査協会アドバイザー、三越伊勢丹グループ会社顧問などを歴任。​DXコンサルタントとして、直近2年間で50社以上のDXプロジェクトに関わり、現在に至る。​
著書に「難しいことはもういいんでDXがうまくいく方法だけ教えてください別ウィンドウで表示します」がある。​

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