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AIも寿司も仕込みが命!

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AIが得意なことは予測

「AIが話題だけど、会社でAIを使う場面はない」「AIが自分の仕事に役立つのか分からない」という意見を耳にします。実際に普段の仕事が問題なく進んでいれば、敢えてAIを使う場面は想像できないでしょう。逆に「AIなら何でもできるのでは?」というイメージから、本来はAIに不向きな使い方をする場面も見られます。
実際には、現在のAIができることは意外と限られるので、注意が必要です。

では、AIが得意なことは何でしょう。代表的なものが「予測」です。
将来の予測であれば、仕事で使える場面も想像しやすいでしょう。
例として、売上の予測ができれば、事前に発注をかけたり材料を準備しておけます。あるいは、為替レートや原材料価格の予測ができれば、値上がりが分かったら大量に注文しておき、値下がりが分かれば待つなどの対策がとれます。こうした経済動向を予測する達人もいますが、誰でもできることではありません。
そこで、AIに予測してもらいましょう。

AIは「予測」が得意なイメージ

仕事で役立つAI予測

では、仕事で使える予測について例を挙げてみましょう。

需要の予測

商品の販売や受注など、状況に応じて変動する需要を予測します。
飲食店で時間ごとの来店客数が予測できれば、出勤するアルバイトを最適な人数にするシフトが組めます。
あるいは、工場で必要な原材料の種類と量を予測して安い時に大量入荷しておき、値上がりした時に在庫分でカバーすれば、利益向上が見込めます。
また、顧客からの注文数を予測しておくことで、品切れによる販売機会の消失を防げます。

変動の予測

外的な要因によって変動する影響を予測します。
例として、コンビニで近隣に競合他社が出展した場合、売上や来客数が変動します。もしも影響が大きければ、事前の対策などが必要でしょう。
あるいは、工場などで設備が故障した場合、業務にどのような影響が出るかが予測できれば適切な準備ができます。
影響が大きければ、手間や費用をかけてでも対策すべきでしょう。

人の行動を予測

人が何らかの行動を起こす場合、予兆があります。この予兆を将来予測に活用していきます。
例として、会社を退職する予兆なら、過去の傾向から不満を抱く要因を見つけて、退職前に面談を行うなどの対策がとれます。
別の例として、ネット通販の会員向けに割引キャンペーンを実施する場合、割引金額が多ければ注文数は増えますが、全体の売上額が減りすぎると利益が出ません。割引額と注文数のバランスを調整して、もっとも利益が出る金額を導き出すべきでしょう。

ここまで予測の例を挙げましたが、必ずしも予測どおりにいくとは限りません。
想定外の事態も起こるため精度100%はありませんし、100%に近づけるには多大なコストもかかります。

AI予測の成長曲線

精度99.9%を求めるにはコストが高いことを示すイメージ

また、株価のように様々な要因が絡むものは難易度が高く、正確な予測が困難です。
まずは限定的な状況下において、予測が外れても大きな影響が及ばないものから試していきましょう。

AI予測を業務に落とし込む

実際に会社の業務向けに予測を導入する場合、どんな準備が必要になるでしょう。
ここでは、実際に需要予測で成果を出している回転寿司チェーンのスシロー様をモデルケースにして考えてみます。なお、現在はコロナ禍などもあって回転寿司店では都度注文すると個別にレーンに乗ったお皿が届く仕組みですが、説明の都合上回転するレーンに一定量の寿司が流れている状況としています。

需要予測が必要になった背景

予測を行う前の状況としては、どの寿司を・いつ・どれぐらい流すかは、お客様の状況を見て寿司職人が都度判断していました。この方法では職人によって判断が異なります。さらに、新たな出店のために職人を育てるのも手間と時間がかかります。そして、寿司は一定時間経過すると劣化のため廃棄しなければいけません。
利益のみならず企業に対するイメージも悪化するため、需要予測の必要性が高まりました。

分析の肝はデータ収集

そこでスシローでは、いつ・どこで・何の寿司ネタが食べられたかのデータを収集することにしました。
お皿にICチップを取り付けて、お客様がいつ何を食べたか把握します。さらに、入店時の時間や大人か子供を判別するなど、年齢・性別・時間帯・店の場所・曜日・天候などの個別データを幅広く収集して、食べる量や寿司ネタの好みなどを細かく分析できるようにしました。
こうして来店客が1分後と15分後にどんなネタと数を食べるのか予測しつつ、最後にはデザートを流すなどお客さんの食べたい握り寿司をタイムリーに提供できるようにしました。この仕組みを実現するため、店舗の厨房に供給するネタや数を指示するディスプレイも設置しています。

さらに、全店舗の来店客を分析することで、地域ごとにおける寿司の好みなども分かります。
そこで特定地域の店舗で人気のある食材をまとめて仕入れれば、効率化ができます。また、同じ地域や条件が近い場所に新規出店した場合の来客数を予測すれば、開店時におけるスタッフの増員などの支援も適切に行えます。

精度を向上させるには、大量のデータを蓄積しなければいけません。
各店舗から毎月収集される30〜40万件のデータを保管しなければなりません。さらに、分析においては過去のデータも対象となるため、増え続けるデータに対応できるクラウドのデータベースを導入するなど、新たな環境への移行も必要になりました。

勘と経験に頼らないデータ活用による需要予測

こうして集計したデータは、店舗や本部の各部署において、レポート形式で可視化できるようにしました。
これまでは勘と経験で判断していましたが、データの集計や掘り下げを行うことで根拠を示せるようになります。このようなデータに基づく予測であれば、外れても要因を分析して改善できます。
さらに、データ分析で結果が出るまでに数日程度かかっていた時間を短縮して、瞬時に必要なデータを分析できるようにしました。必要な時に必要なデータを分析して実行することで、精度の向上を図っています。

それでも、スシローにおける需要予測は完璧ではありません。
販促キャンペーンや期間限定のコラボメニューなど、通常業務以外の突発的なイベントも発生します。こうした例外的な事態においては、AIによる予測が難しくなります。そこで、過去の似た状況から変化を予測するなど、大量に蓄積されたデータを活用しています。

AI予測を業務に落とし込むモデルケースのイメージ

しかし、AIによる予測には欠点があります。
常に新しいデータを収集して学習させないと、精度が下がることです。これは、古いデータのままでは最新の状況に応じた予測ができないためです。
ですので、AIが効率よく学習できる環境を作るなど、体制や仕組みづくりも重要になってきます。

お手軽な予測を試してみましょう

ここまでAIが得意とする予測と、予測を業務に取り込むまでの事例を紹介いたしました。そこで、皆様の仕事で「予測してくれると便利なもの」を見つけてみましょう。
これまでの予測は勘と経験頼みだったり、予測ができる人が限られたりなどの課題がありました。今は問題なくとも、いずれは予測の担当者も退職するでしょう。その時に、後任の担当が同じ精度で需要予測できるとは限りません。
そこで、新たな体制づくりを準備していきましょう。

現在では、初心者でも使いやすいAI予測ツールが登場しています。
先々に備えて、今からAIによる需要予測ができる体制を整えてはいかがでしょうか。

この記事の著者

マスクド・アナライズ

ITスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスに関するSNS上の情報発信において注目を集める。同社退職後は独立し、DXの推進、人材育成、イベント登壇、ニュースサイト向けの記事や書籍の執筆などで活動。現場目線による辛辣かつ鋭い語り口で、存在感を発揮している。
著書に「データ分析の大学」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」「これからのデータサイエンスビジネス」がある。

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